携帯電話の未成年契約者向けWebフィルタリングに関するまとめ

 ここ最近のいくつかの報道の中で、一定の注目を集めているのが、この「フィルタリング」というものです。フィルタリングとは、インターネット上に公開されているWebページのうち、ある一定の条件を満たすものを遮断してしまうものなのですが、総務省がこのフィルタリングの導入を促進するように働きかけた結果、携帯電話会社各社は、未成年者、もしくは18歳未満の契約者全員に、これを原則自動適用することにしたそうです。携帯電話会社の中には、自社の公式サイトのみしかアクセスできなくなるフィルタリングをデフォルトの設定にしようとしているのですから、ある意味話題性は抜群です。
 ところが、この突然の発表に戸惑いを隠せないでいるのが、当然フィルタリングの対象者です。「結局どうなるの?」「意味が分かんない。」の声がいろんなところで上がっていると聞いています。富山第一高校の生徒の皆さんの中にも、混乱を隠せないでいる方がいらっしゃるのではないでしょうか。また、SNSやブログ、プロフ、学校の非公式サイトを経営している方からも、この決定に対して疑問視する声が後を絶ちません。
 そこでこのページでは、この状況に至るまでの経緯や、各携帯電話会社の対応、それによる様々なWebサイトへの影響、そして最後にTomiichi.mobi管理者としての考え方を説明したいと思います。


総務省が携帯電話会社各社に「フィルタリングサービス」の導入促進を要請

 これまでも総務省は携帯電話会社に対し、未成年者の契約時にはWebフィルタリングに関して親権者の意志を必ず確認するように要請してきました。結果としてそれには一定の成果があったようで、フィルタリングサービスの契約数は3倍以上もの伸びを示しました。そんな中、出会い系サイトで事件に巻き込まれる、学校裏サイトでの中傷的な書き込みが明らかになるなどの問題が顕著になってきたこともあり、総務省は更に強化する方針を固め、携帯電話会社各社に要請を行いました。これが2007年12月10日のことです。

 青少年が使用する携帯電話・PHSにおける有害サイトアクセス制限サービス(フィルタリングサービス)の導入促進に関する携帯電話事業者等への要請 【総務省】

 具体的にこの要請内容を説明すると、簡単にですが、次の4点にまとめることができます。

 @ 新規契約者に対してはフィルタリングを原則適用し、親権者に対して意志の確認を行うこと。
 A 既に契約をしている18歳未満の者に対しても、原則としてフィルタリングを適用すること。
 B Aに該当する者の親権者に対しても、意志の確認を行うこと。
 C 代理店に対して、これらのことを徹底させること。

携帯電話会社各社が対応を発表

 さて、その翌月ですが、さっそく携帯電話会社各社から相次いでプレスリリースが発表されました。

2008年1月9日 フィルタリングサービスの取り組みについて ソフトバンクモバイル株式会社
2008年1月15日 青少年により安心・安全に「iモード」をご利用いただくための
更なる取組みについて
NTTドコモグループ各社
2008年1月15日 au携帯電話でインターネットを安心・安全にご利用いただくための
取り組みについて
KDDI株式会社
沖縄セルラー株式会社
2008年1月18日 「有害サイトアクセス制限サービス」(フィルタリングサービス)の
更なる取り組みについて
株式会社ウィルコム
株式会社ウィルコム沖縄

 どの携帯電話会社も、総務省が要請した上記の@〜Cの点を満たしており、総務省の方針(フィルタリングサービスの導入促進と強化)に対して同意したことが分かります。
 ところがこの決定、よくプレスリリースを見てみると、携帯電話会社によってその対応に違いがあることが分かります。フィルタリングが適用されることには変わりありませんが、その適用開始時期や年齢が既存の契約者と新規契約者で違っており、またフィルタリングの種類にも違いが見られます。一見するとどの携帯電話会社がどのような対応をするのかよく分かりません。結果的にこの施策自体が複雑なものとなってしまって、「理解に時間がかかる。」、もしくは「分からない。」という声が、特にフィルタリングの対象になる未成年者の方から多く上がっているのが現状です。
 それでは、このフィルタリングサービスをしっかりと理解するために、内容を詳しく見ていきましょう。


分かりやすく?各社のフィルタリングをまとめる

 まずこの「フィルタリング」というものには、大きく分けて2種類あることをご存じでしょうか。特定のサイトへのみアクセスを可能にする@ホワイトリスト方式、そして特定のサイトへのアクセスを不可能にするAブラックリスト方式の2つです。特にこれに関して説明は必要ないと思っていますが、この2つがあるということと、それがどのようなフィルタリングなのかをしっかり覚えておいてください。
 では次に、各携帯電話会社はどちらのフィルタリングを自動的に適用するのか、またその結果、いつからどのようなサイトにアクセスできて、どのようなサイトにアクセスできなくなるのか、対象者は誰になるのか、解除する方法などを、簡単に表で説明したいと思います。

  ホワイトリスト方式 ブラックリスト方式 実施時期 適用条件 解除条件 案内
NTTドコモ
(既存契約者)
★(自動適用)
キッズiモードフィルタ
(iモード公式サイト以外アクセス不可)
iモードフィルタ
(特定有害サイトのみを遮断)
2008年8月 18歳未満全員 親権者の同意
(ショップでの手続き)
請求書同封物
ホームページ
ダイレクトメール
NTTドコモ
(新規加入者)
2008年2月 未成年者全員
au(既存契約者) ★(自動適用)
EZ安心アクセスサービス
接続先限定コース
(EZWeb公式サイト以外アクセス不可)
EZ安心アクセスサービス
特定カテゴリ制限コース
(特定有害サイトのみを遮断)
2008年6月 18歳未満全員
au(新規加入者) 2008年2月
ソフトバンクモバイル
(既存契約者)
Yahoo!きっず
(公式サイト以外アクセス不可)
★(自動適用)
ウェブ利用制限
(特定有害サイトのみを遮断)
2008年6月 SMS
ホームページ
ソフトバンクモバイル
(新規契約者)
2008年1月中旬
ウィルコム
(既存契約者)
―(なし) ★(自動適用)
有害サイトアクセス制限サービス
(特定有害サイトのみを遮断)
不明 請求書同封物
ホームページ
ダイレクトメール
ウィルコム
(新規加入者)
2008年2月

 この表を見て分かる通り、NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイル、ウィルコムの4社は、大きく分けて2つのグループに分類できることが分かるかと思います。

<NTTドコモ・auグループ>
 この2つの携帯電話会社は、新しくホワイトリスト方式を18歳未満の契約者全員(NTTドコモの新規契約者のみ未成年者全員)に適用することになっています。つまり、iモード公式サイトやEZWeb公式サイトのみにアクセスが可能で、この公式サイトとはマイメニューやメニューリストに入っているサイトのことを指します。なので、例えばURLを直接入力する方法によるアクセスは、そのアドレスが公式サイトに登録されていない限り全て遮断され、結果として見ることができなくなります。もちろん、これはTomiichi.comやTomiichi.mobi、公式サイトに登録されていないブログ、SNS、個人のホームページなども該当します。日頃からこれらのサイトへのアクセスを行っている方にとって、かなり不自由なものとなるはずです。

<ソフトバンクモバイル・ウィルコムグループ>
 こちらの2つは、新しくブラックリスト方式を18歳未満の契約者全員に適用することになっています。ブラックリスト方式のため、特定有害サイトへのアクセスが不可能になります。この「特定有害サイト」ですが、出会い系サイトや暴力的なサイト、または成人向けのサイトなどが含まれているようです。こちらの方法の場合、特に有害サイトとして指定されていない限り、Web上にあるサイトへのアクセスは基本的に自由となります。

 もちろん、どの会社もホワイトリスト方式とブラックリスト方式共に解除することが可能で、それには親権者の同意が必要になります。手続きは各携帯電話会社からの案内があり次第、ショップのみでの取り扱いになります。(家電量販店やWeb上での手続きは恐らく不可能であると考えられます。)また、単純な解除だけではなく、ホワイトリスト方式からブラックリスト方式への変更、その逆も可能で、必要であれば親権者の方と話し合いをして手続きを行うと良いでしょう。


NTTドコモ、auのホワイトリスト方式自動適用にコンテンツ・ユーザーが反発!

 皆さんもこの記事を読んでお分かりの通り、実はソフトバンクモバイルとウィルコムが自動適用することに選んだブラックリスト方式は、そこまで影響が大きくありません。アクセスしたいサイトがデータベース上で「有害」と指定されていない限り、これまで通りWebブラウジングを楽しむことができるわけですからね。ユーザーの立場からすれば納得できる程度でしょう。
 ところが、NTTドコモとKDDIは自動適用するフィルタリングにホワイトリスト方式を選んでしまいました。前項で説明した通り、ホワイトリスト方式のフィルタリングは、現状iモードやEZWebの公式サイトのみにアクセスが可能となるもので、これは利用するユーザーに対してかなりの制限をかけることが前提となっています。両社の携帯電話の累計シェアは約82%(NTTドコモ:約53%、au:約29%)と、市場の8割以上を占めています。2社だけで圧倒的な契約者数をかかえているため、これによって大手の一般サイトではアクセス数、広告収入の激減が待ちかまえているのが現状です。最悪の場合、日本経済にも大きな影響を及ぼすことになってしまいます。
 ではこのような決定に、フィルタリングの対象になる未成年契約者や、サイトの運営者・企業はどのように感じているのでしょうか。

 「あまりに急」「検閲では」―携帯フィルタリングに事業者から不満続出 【ITmedia】
 「まぢわかんない」「悪い大人を取り締まって」―携帯フィルタリングに未成年者の反応は 【ITmedia】

 このように、未成年者の混乱・反発だけでなく、様々なサイト・企業にも大きな影響を与えています。
 では、ここで疑問に感じるのが、この「ホワイトリスト方式」というものが良くないものなのかということです。結論から言ってしまうと、「ホワイトリスト方式」というものが悪いわけではありません。このフィルタリング方式は、“特定のサイトへのアクセスのみを許可する”というものですから、もしこのデータベースに世界中の健全なサイトを登録することができるのであれば、イタチごっこになってしまうブラックリスト方式に比べてその効果は格段に大きいことになります。しかし、現状インターネット上にどれだけのサイトが存在しているでしょうか。それら全てを「健全・有害」の2つに分類し、データベースに登録することは、現実的に不可能です。そういったことも背景にあり、結果的にNTTドコモ、KDDIは自社の公式サイトのみにアクセスを許可するフィルタリングを採用したのでしょう。つまり、問題があるとすればこの2つの携帯電話会社にあることになります。

総務省も予想外!?その規制に待った!!

 これらの経緯を見ていると、総務省に一番の責任があるように思いがちですが、実は総務省は“フィルタリングの原則適用”を要請しただけであって、誰もNTTドコモやKDDIが実施したホワイトリスト方式を原則適用しろとは言っていないのです。
 そして、様々な混乱や事業者からの反発を受け、1月29日には流石の総務省も「やり過ぎた規制」に待ったをかけました。

 携帯フィルタリング、総務省が“過剰規制”に「待った」 【ITmedia】

 総務省も同じく、やはりホワイトリスト方式の自動適用に問題を感じているようで、4月を目処に中間報告会を開き、NTTドコモとKDDIに対しては原則としてブラックリスト方式をデフォルトにするよう要請するみたいです。
 ブラックリスト方式ならまだ問題点は少ないよう思えます。しかし、細かな部分でブラックリスト方式の原則適用にも疑問視する声があり、まだまだ根本的な解決とは言えないようです。


Tomiichi.mobi管理者としての考え方

 仮に全ての携帯電話会社がブラックリスト方式に変更したとしても、少し問題視しなければならないことがあります。そもそもiモードやEZWeb、Yahoo!ケータイに代表されるものは、「無線IP接続サービス」として定義されており、これにより携帯電話会社は、一般的なインターネットの世界でのISP(インターネットサービスプロバイダ)に該当します。現に、iモードは世界最大のISPとしてギネスにも登録されています。電気通信事業者法では第三条において検閲を禁止していますが、フィルタリングを自動的に適用するとなると、これは第三条に対してグレーゾーンになるような気がします。未成年契約者というだけで勝手に情報を制限するという、この差別的な取り扱いも、電気通信事業者法としていかがなものでしょうか。
 そして、ブラックリストの基準は誰が作っていくのかという点にも問題があります。例えば、あるサイトが現実世界での出会いなどを制限することに多くの努力をしていたとしても、結果として“可能性があるから”という理由だけでブラックリストに登録される場合も現に存在しており、そういったサイトの扱いには混乱が生じるでしょう。当然、Tomiichi.comやTomiichi.mobiも例外ではなく、掲示板の書き込みを常に監視しているにも関わらず、可能性だけを前提にブラックリストへ登録されれば、それは我々にとってとても屈辱的なことになります。
 さらに、個人的に最も疑問視しているのが、責任の所在を明らかにしないままフィルタリング導入を義務づけている点です。出会い系サイトも学校裏サイトも、サイト自体が問題を引き起こしているわけではありません。助長しているサイトがどこかに存在しているにしろ、引き金となっているのはやはり利用しているユーザーだと思います。情報を閲覧する手段を制限する前に、教育で何とかするという考えは無いのでしょうか。
 私は携帯電話を悪用した一連の事件を聞く度に、携帯電話そのものを問題視するよりも、その人自身、もしくは未成年者の場合その保護者に対して道徳性の無さを強く感じています。携帯電話が普及した現代だから起こっている問題ではなく、むしろ“教育”や“道徳”、さらには“人”というものがここ数年おかしくなっているように思えるのです。それを棚に上げて携帯電話というものにダメ出しをするようでは、もう日本は手遅れなのかもしれません。
 この他にもたくさんの問題点があるかと思いますが、今回フィルタリングに関して業界に大きな波紋を呼びました。通信事業者だけではなく、様々な人がこの問題に対して真剣に考えていかなければならないと、この記事を書いていて改めて感じています。皆さんは、どのようにお考えでしょうか。

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